賃借物件の明渡しと立退料の相場??(2)
2025年2月26日
第2.立退料の算定方法0.いわゆる用対連基準とは
1.①移転費用実費
- 立退料の算定にあたって、用対連基準という基準を用いることがあります。これは、「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(昭和37年10月12日用地対策連絡会決定)及び「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」(昭和38年3月7日用地対策連絡会決定)のことです。
- この用対連基準は、名前のとおり、公共用地の取得に伴う損失補償を適正に行うために定められた基準で、多くの裁判例が判断の参考にしています。
- 大別して、①移転費用実費、②営業損失補償、があります。なお、不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日改正によるもの)には、③借家権価格というものがあります。
1.①移転費用実費
- (1)什器備品の移転費用(梱包を含めた引越費用)
- ・立証資料として引越業者の見積書などを用意します。
- (2)仲介手数料、礼金などの代替賃借物件取得費用
- ・代替賃借物件を取得するのに必要な仲介業者への手数料、新規賃貸人へ支払う礼金などです。
- ・なお、敷金は預り金なので含まず、現在の賃貸人からは原状回復の必要性を考慮しつつ敷金の返還を受けることになります(立退料とは別の問題です)。
- (3)移転先の新規造作設置費用
- ・移動できない造作を移転先で造作する費用です。造作自体が古い場合には一定割合を減額することがあります。
- (4)移転先との賃料差額
- ・新しい転居先の賃料が高いときは、その差額を立退料に加算します(考慮期間は、差額が3倍超えの場合は4年間、2倍超3倍以下の場合は3年間、2倍以下の場合は2年間とする、用対連基準細則別表5に準拠する例が多いようです。なお、居住用建物の場合には1~2年程度という目安が裁判例上ある程度形成されていると言われています。)。
- (5)会社の移転の連絡に伴うあいさつ、ホームページその他の変更など。
- ・移転に付随する費用です。
- (6)許認可関係の変更手続費用など。
- ・保育所など所在地や建物の面積や構造などと許認可が紐付いている場合には許認可をやり直す必要があり、行政書士等の専門家費用も含めて考慮します。
- (1)明渡しに猶予期間を設けるとき。
- ・猶予期間中に今の店舗で事業をしながら、移転先を探し、移転先の内装工事を行うため、休業補償は含まないことが多いです。ただし、移転先で内装工事をしているときの移転先の賃料を加算することがあります。
- (2)明渡しに猶予期間を設けないとき。
- ・今の店舗での事業をいったん止めてから、移転先の店舗を探し、内装工事をして、物品を移転し営業開始までの期間を、休業期間とします。その休業期間中の売上(ただし電気代などの掛からなくなった経費を控除する)、従業員への給料、店舗の動産類の保管費用などの費用を休業補償として立退料に含めます。
- (3)売上差額
- ・移転すると得意客が離れ、従来の売上を維持できないと想定される場合には、売上差額(得意先喪失分)を立退料に加算します(業種ごとに一定の売上減少率が定められた、用対連基準細則第27別表8も参照)。
- (1)借家権の意味は多義的ですが、この記事では上記の①移転費用や②営業損失補償を含まない、「借家権自体に認められる財産的価値」と定義します。
- (2)不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日改正によるもの)
- Ⅰ.借家権の取引慣行があるもの(居抜きでの売買が成立しうる飲食店など)
- ・取引事例比較法(ただし類似の取引事例を見つけることは難しい)、控除法(賃借人がいる場合と空家の場合との売買価格の差額)、割合法(税法上の評価基準であり借地権価格の30%とするもの)、があります。
- Ⅱ.借家権の取引慣行がないもの(居住用の賃借権など)
- ・差額家賃等補償法又は賃料差額還元法(移転先との賃料差額の一定期間分を補償するもの)は、①移転費用の概念に含まれるので、あえて独立して借家権価格として加算することはできないでしょう。
- Ⅰ.借家権の取引慣行があるもの(居抜きでの売買が成立しうる飲食店など)
- (3)再開発利益の配分や慰謝料等の精神的損失は考慮されません。