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賃借物件の明渡しと立退料の相場??(1)

2025年1月11日

賃借物件の明渡しと立退料の相場??(1)
  • 2025年新年あけましておめでとうございます。昨年(2024年)にご依頼頂いた案件では、借地又は借家の賃料の増額、賃料その他の賃貸条件が不釣り合いになったことからくる賃借物件の立退き、に関する事案が非常に多かったのですが、中でも「賃借物件の明渡しの際の立退料の相場」というご質問が多数ありました。
  • そこで、事案に応じて何度もご説明していく中で、その共通項をまとめていたところ、ちょうど判例タイムズ2025年1月号において奥田達生裁判官が「借家契約終了に伴う立退料の算定方法~近時裁判例の分析を通して」と題する記事(以下、判タ記事といいます)を掲載されたことから、それを踏まえつつ、主に建物の立退料に関して、この記事を作成することにしました。
  • 第1.幾らでも良いので立退料を支払えば立退きが認められるというわけではない?
  • しばしば、「賃貸人側で古くなった建物を建て替えたい、賃借人には立退料を通常より多く支払うので、裁判をして何とか立退きを認めさせて欲しい。」というご要望があります。この記事の冒頭で恐縮ですが、この考え方は一般的に裁判所において認められていません。
  • なぜなら、裁判において建物の明渡しが認められるためには、「賃貸人が建物の使用を必要とする事情」がまずは必要となるからです。よく、賃借人がいる賃借物件を安く購入し、賃借人を立ち退かせ更地にして高く転売する動きをする不動産業者などを見かけますが、交渉によるのであればともかく、その交渉決裂後に裁判で立退きが認められることは困難と言えます。このような不動産業者は、賃借人がいることを知りつつ賃借物件を取得したのだから、「賃貸人」が建物の使用を必要とする事情が「賃借人」の居住の必要性を上回るものではないと認められるからです。
  • ただし最近よく「賃貸人」が建物の使用を必要とする事情、として裁判において主張されることが多いのは、賃貸人が直接的に建物を自己使用することはないが、建物の老朽化又は耐震性不足を理由に建て替える(隣接地を合せた再開発を含む。)ことをあげているものが散見され、判タ記事によれば「真に建替えの必要性が認められる場合(耐震補強工事が物理的には可能であるが経済的には合理的でない場合を含む。)」にはこれを賃貸人が建物の使用を必要とする事情等として考慮し、立退料との引換えに建物明渡請求を認容する事案が多いと裁判例の傾向を紹介しています。
  • したがって、とりわけ旧耐震の建物の場合には、建替えの必要性を一級建築士の意見書等を用いて立証を試み、裁判官に「賃貸人が建物の使用を必要とする事情」について、いちおうの心証をもって貰うことができれば、ようやく立退料の算定の審理に移っていくことができると思われます。
  • そこで、こういった「賃貸人」が建物の使用を必要とする事情がいちおうあるという前提で、立退料の算定方法についてお示しします。


令和7年1月11日
弁護士 鈴木洋平
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