M&Fパートナーズ法律事務所

働き方改革! 年次有給休暇の付与義務化について

2019年8月29日

2018年7月6日「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が交付されました。これにより,長時間労働の是正,多様で柔軟な働き方の実現,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保,などの措置を雇用主が講ずるものとされました。今回は,このうち長時間労働の是正にかかる有給休暇の付与義務について説明いたします。

そもそも有給休暇は,6か月以上の継続勤務があり,その期間中に8割以上出勤している労働者に10日間付与されます。その後1年経過ごと(1年6か月,2年か6月,3年6か月,4年6か月,5年6か月,6年6か月)に,その1年間に8割以上出勤している労働者に日数(11,12,14,16,18,20日)が付与されます(パートタイム労働者等は別途の定めがあります)。

有給休暇の取得は,労働者の権利ですので,労働者が取得を希望したら取得させなければなりません。その時季が事業の正常な運営を妨げる場合においては,他の時季に変更することができるに過ぎないのです。

ただし,有給休暇の権利は発生から2年(2020年4月からは5年に改正される可能性があります)で時効になり,また,退職した場合にもその時点で消滅します。このように消滅するはず権利を買い取ることは労働者に有利になりますから違法とは言えません。他方で,消滅する前の権利を,雇用主の側から買い取って有休休暇を付与しないことは違法なのです。

そして,2019年つまり今年の4月から,会社規模に関係なく,1年間に10日以上有給休暇が付与される労働者に対しては,うち5日について,雇用主が労働者に有休を取得させなければならない義務を負うことになり,違反した場合には労働者1人につき30万円以下の罰金に科せられる可能性があります。

これまで,労働者が業務多忙で有給休暇の取得を申請できない➝雇用主も有給休暇の付与が義務ではなく付与しない➝そのまま2年が経って権利が時効消滅➝雇用主の側も悪びれて消滅した権利を買い取る➝労働者も買い取って貰えるなら権利を行使しないまま働き続ける,という循環によって,有給休暇取得の権利行使がままならない実態があったかと思われます。今後は,このような循環に歯止めがかかることになります。

さて,このような改革に対する対応についてですが,有給休暇の権利発生時に1年分の付与日を割り振ることが考えられます。割り振りについては,労働者の権利であることを前提に,原則として労働者に指定させる,その上で事業の正常な運営を妨げる場合には雇用主が時季を変更するものとすべきでしょう。また,計画的付与といって,閑散期などに全労働者に与える,会社の部署単位でまとめて与える,例えば誕生日などの記念日を有給休暇とするなど個人単位で,各労働者の指定がなく付与する制度もありますが,5日間を超える部分の日数に対してのもので,就業規則と労使協定の定めが必要となります。

これを機会に,労働者の方たちと,有給休暇について話し合ってみてはいかがでしょうか。

以上

2019.8.29 弁護士 鈴木洋平

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